今年のM-1がめちゃくちゃ熱いので語る
この記事は 第二のklis Advent Calendar 2019 4日目の記事です
こんにちは、または初めまして、にわとり(@niwatori_univer)です
初めてお目にかかる方もいらっしゃると思うので軽く自己紹介したいと思います
klis16の「庭田にわとり」と申します 車をぶん回している宅通4年目です
※お急ぎの方は本題となる中見出し「伝説の目撃者となれ」まで飛ばしてください
はじめに
私現在、絶賛卒論とバトル中な訳ですが、卒論のテーマにお笑いを選ぶほどお笑いが好きでして、今年は卒研で授業がないのをいいことに1年間で20以上のライブを観に行きました よろしくないですね
担当日である12月4日にも、授業後ダッシュで駅に駆け込み「M-1グランプリ準決勝・ライブビューイング」を観に行きました
その準決勝の熱戦と決勝戦への期待に圧倒され、今回のアドベントカレンダー企画ではM-1について語ることにしました
●M-1グランプリ(以下、M-1):年に一度、若手漫才師の日本一を決めるお笑い賞レースの最高峰 決勝戦の様子は毎年12月に全国で生放送される 予選大会は東京や大阪などにある演芸ホールで行われるが、チケットは常に高倍率で、日本で最も豪華なお笑いライブと言える
●準決勝・ライブビューイング:15回の歴史があるM-1で今年初めて、準決勝の模様が全国の映画館でライブビューイング(正確にはディレイビューイング)される運びとなった
今年のM-1は大混戦
何故、今年のM-1が熱戦かつ高期待度かと言うと、近年稀に見る大革命が発生したからです 説明致しましょう
まず、M-1決勝に出場できるのは9組(+敗者復活戦を勝ち上がった1組)なのですが、9組中7組が決勝初進出という非常にフレッシュな顔ぶれが揃っています
からし蓮根(初)
ミルクボーイ(初)
ぺこぱ(初)
オズワルド(初)
すゑひろがりず(初)
ニューヨーク(初)
インディアンス(初)
見取り図(2)
かまいたち(3)
普段テレビを見ないという人はもちろん、テレビが好きな人でもはて?となるくらい馴染みのないメンバーだと思います 何が起こっているのでしょうか
①決勝経験者達が準決勝で敗れる
馴染みがないと感じるのもそのはず、今年は決勝戦の一つ前の戦い、準決勝でこれまでの決勝進出経験者が軒並み落とされているのです
特に和牛、ミキ、カミナリは全国区レベルの知名度があり、確実に決勝に残るだろうと言われていました
②これまでの決勝経験者が何組もエントリーしていない
昨年2018年の決勝メンバーがこちら
この内、大会優勝の霜降り明星、コンビ歴制限によりエントリー不可のギャロップ、スーパーマラドーナ、ジャルジャルは今大会には出場していません
●M-1のエントリー資格: コンビ結成歴15年以内であること
コンビ歴制限により、その年がエントリーできる最後の大会である状態を「ラストイヤー」と呼ぶ
さらに、アキナ、さらば青春の光、相席スタートなど、エントリー条件圏内ではあるが今大会に出場していないコンビもいくつか見受けられています こちらの3組は共に2016年大会のファイナリストでした
この通り、今年の大会はエントリーの時点で、誰が決勝に駒を進めるのか予測できない事態となっていたのです
しかしながらここまで初顔が並ぶとは流石に誰も予想していなかったと思います ただ、常に新しさを求めがちな私としては「おお、やってくれるぜ、オラわくわくすっぞ」というのが率直な感想ですね
伝説の目撃者となれ
「えー あの面白い人たち今年は出ないの?」
「知らん芸人ばかりだし興味ないわ」
そうなるのも分かります 実際、準決勝の合格者が発表された際にはM-1公式Twitterに何百件ものリプライが送られていたり、Yahoo!で和牛敗退がニュースになっていたりと多くの視聴者の予想を裏切る結果となったのは否定できないでしょう
ですが、だからといって決勝戦の生放送を見逃すのはもったいない!
この大会は間違いなく今までの大会とは異なるものになると思います
数々の強豪を倒して勝ち上がった9組の漫才は、視聴者に必ず笑いと刺激を届けてくれると私は信じています
そこで、ようやくこの記事の本題に移りますが、今大会の決勝メンバー9組について、初登場の7組を中心に私なりの解釈を交えつつ紹介していこうと思います
この記事を読んで少しでも魅力に感じ、来る12/22(日)の決勝戦をテレビで見てくれたら私としては幸いです
↓用語解説
●コント漫才:客と店員、彼氏と彼女など、役を決めてシチュエーションを演じる漫才 (例)サンドウィッチマン「宅配ピザ」千鳥「タクシー」など
●しゃべくり漫才:ある議題について二人で討論する、話題やエピソードを語るなど、会話や喋りがメインとなる漫才 (例)ブラックマヨネーズ「ボウリング」ナイツ「Yahoo漫才」など
●漫才における「システム」:特徴的なスタイルや仕組みであること 同じことの繰り返し、メタ発言、急展開など
からし蓮根
芸歴7年目という若さながら三年連続準決勝進出という実力者で、他の芸人やお笑いファンからも「今年は決勝に行くのではないか」「優勝候補」と高い期待を寄せられている若手のホープです
注目すべきは、「王道を突き抜けるコント漫才」
特別なシステムはなく、役に入ってそれぞれ演じる中でボケとツッコミのやり取りが繰り広げられるという、漫才としてはとてもシンプルな作りになっています
だからこそ、斬新でダイナミックな「ボケ」と的確な言葉の力強い「ツッコミ」の「掛け合い」という笑いの本質部分が脳にダイレクトに響いてくるのだと考えます
ボケも見たことないしツッコミもワードチョイスが適切 動きでも言葉でも笑わせることができる、コント漫才のオールラウンダーとなりそうです
ミルクボーイ
初の準決勝進出で決勝への切符を手にした芸歴15年目の苦労人コンビです
「あるもの」について、正しいのか誤っているのかを永遠に繰り返し議論するという、独創的でシステマティックな漫才です
この漫才には「正」のパートと「誤」のパートがあり、それを繰り返すという構成になっています
正のパートでは「あるもの」について二人で正しい知識を語り合い、観客の共感を誘います
しかし、誤のパートではボケが「あるもの」には当てはまらないようなめちゃくちゃなことを言い出し、ツッコミはそれをツッコみつつ、さらにボケを訂正するように正しいあるあるを提示します 「誤」を示してから「正」を示すことで、あるあるをさらに強調するシステムが完成します
正と誤の両方向からあるあるをプッシュするというまさにあるあるネタを突き詰めた漫才だと言えると思います
ぺこぱ
こちらも初の準決勝参戦からの決勝進出で、決勝メンバーで唯一、よしもと所属ではないコンビです サンミュージックプロダクションからのファイナリストは15年大会のメイプル超合金以来4年振りです
注目すべきは、「スカシツッコミの超進化系漫才」
スカシツッコミとは、ボケに対して普通にツッコむのではなく、無視したり「そうだね」などとあしらったりするようなツッコミのことを指します ボケの過ちを正すのがツッコミなのにツッコミが働かない、という裏切りの笑いです
笑いのシステム的にこれ以上は詳しく言えませんが、ツッコミのスタイルに注目して見てみてください あまりの衝撃展開に笑わずにはいられないはずです
オズワルド
初の決勝どころか、初の3回戦通過で勢いそのままに勝ち上がってきた、今大会最大のダークホースと呼べるであろうコンビです
注目すべきは、「東京発のストレートしゃべくり漫才」
特に近年のM-1では、大阪よしもと出身のコンビが圧倒しており、東京の漫才は大阪の漫才に勝てないのかと議論されるほどでした
反対に、コントの大会・キングオブコントでは東京よしもと出身や本社が東京にある事務所所属の芸人の方が強かったりします 東京ではコントのみまたはコントと漫才両方を行うコンビが多い中、このコンビは漫才一本で勝負しています
こちらはしゃべりがメインの漫才ですが、上述のからし蓮根と同様に独自のフォーマットを持つ訳ではなく、会話の展開やワードセンスで笑いを起こすという王道的な笑いの取り方をします
予想の斜め上からやってくるボケやツッコミのフレーズには毎回笑かされること間違いなしです
すゑひろがりず
今年の決勝メンバーは9組中4組が今大会で初準決勝進出となっており、その最後の4組目がこちらのコンビです
注目すべきは、「伝統芸能を極めし者の本格派漫才」
以前は大阪を拠点に活動しており、5年ほど前から東京に移籍してきました
そんな大阪時代から現在に至るまで、袴を召し鼓を構えた「伝統芸能風キャラ」を続けており、今回の決勝進出という事実は芸を磨き抜いた集大成と言えるでしょう
キャラ漫才はキャラを「演じて」いるため、「『キャラが漫才をする』というコント」になりがちなのですが、このコンビの漫才は間違いなく漫才です
どういうことかと言うと、キャラを完全に自分達のものにしているのです
キャラに飲まれていないからこそ、漫才らしいやり取りがすっと頭に入ってきて素直に笑えます また、ネタのテーマについてのあるあるを伝統芸能風にアレンジすることで
「(伝統芸能風に言い換えられたから)聞き覚えはない言葉だけど、(中身はあるあるだから)何か理解できる」
という、あるあるとなしなしによる新感覚の笑いを楽しめます これはキャラ漫才ならではの笑いの手法だと思います
ニューヨーク
芸歴10年目で準決勝常連のコンビです
決勝メンバーの中では芸歴が若い方ですが、何年も前からネクストブレイクと謳われていたコンビで、今年ついに決勝の舞台に上がってきました
注目すべきは、「手数を増やして進化した偏見漫才」
以前から皮肉や偏見を交ぜた漫才やコントを得意としており、そのワードのパンチの強さにはまる人が続出していました
十分力のあるコンビですが、今回の準決勝のネタを見たところ、今までの彼らの漫才ではあまり見られなかったような幅広いジャンルの笑いを取り入れており、確実に進化している漫才だと感じました
インディアンス
こちらも準決勝を複数回経験しており、テレビでも徐々に知名度を上げている人気急上昇コンビです 今年は我らがITF.の学園祭にも来てくれました
注目すべきは、「器用に演じるハイテンション漫才」
とにかくボケ数が多いハイテンションでスピーディーな漫才が持ち味のこのコンビですが、最近のネタを見ているとコント漫才中のキャラの表現力がよりパワーアップしていると感じます
畳みかける強烈キャラと小ボケの連続は誰も真似できない専売特許でしょう
爆発力が見込める漫才なので、決勝の会場にはまるとそのまま優勝もあり得る、ライバル達からしたら脅威となるコンビです
見取り図
二年連続決勝進出で、ネタバトル優勝や大賞受賞など大阪若手の中で今最も注目度が高い実力派コンビです
オーソドックスなしゃべくり漫才から容姿いじりで突き通す漫才にコント漫才など、私の中では割と何でもやっているというイメージがあります
確かな実力で連続出場を決めたコンビなので、決勝戦でも自信に満ち安定した漫才を見せてくれることかと思います
かまいたち
今回の決勝メンバーの中で最も芸歴が長く、今年がラストイヤーのコンビです
今大会唯一の三年連続決勝進出で、若手のファイナリストも多い中、長年培われた確固たる実力で安定感を現したといったところでしょう
決勝戦に連続出場することは相当難しく、その心はこれまでの自分達の漫才と比べられてしまうところだと思います 過去の自分達と最低でも同クオリティ以上のものを作り込まなければいけないのです
このコンビのすごいポイントは、漫才が始まると漫才師に憑依するというところだと感じます 「本気」と書いて「マジ」の目になります その一切のブレなさが連続決勝進出という偉業を成せたのではないでしょうか
おわりに
勝手ながら9組のコンビについて分析してみました
今のお笑いは構成・表現力すべてにおいて相当クオリティが高くなっていると感じます
9組それぞれ強い色を持っており、まず飽きさせはしません
新時代を生きる芸人達の本気の漫才バトルに刮目してみてはいかがでしょうか